最近、年代物のモバイル端末を、eBayなどでコツコツ収集中。『骨董移動端末館』と題して、ぼちぼち所蔵品をエントリで紹介して行きたい。現在の収蔵品は、VINTAGE MOBILEのページにまとめてあります。
さて、骨董移動端末館、第二回はHP OmniGo 100。今回も貴重な未使用品が入手できたので、開封の儀仕立てでご紹介。
メーカー | Hewlett Packard Inc. |
製品名 | HP OmniGo 100 Organizer Plus |
型番 | F1310A (1MB RAM) |
発売年月 | 1994年2月 |
発売時価格/入手価格 | $349/ $36 @ eBay |
CPU | Vadem VG230 – NEC V30HL 16MHz (80186互換) 内蔵 |
OS | Geoworks PEN/GEOS |
ディスプレイ | 6x6cm (対角3.7インチ) 反射式LCD、2値モノクロ240×240ドット |
入力方式 | 感圧式タッチパネル、キーボード、手書き入力 (Palm Graffiti) |
電源 | 単3乾電池 x 2、SRAMバックアップ用 SR2322 x 1 |
寸法・重量 | 15.3 x 9.5 x 2.6 cm・329g (バッテリ込) |
詳細情報 | ericlindsay.com –Hewlett Packard OmniGo 100 pdadb.net –Hewlett Packard OmniGo 100 |
OmniGo 100が発売されたのは1994年。前回紹介したApple Newton Messagepad発売の一年後、今から19年前の製品だ。
OmniGoシリーズは、大人気を博したHP LXシリーズの後継と戦略的に位置づけられて設計されたらしい。GUIをベースとし、手書き入力に対応した洗練された製品を目指していた。OmniGo 100、当時の価格は$349。Newtonの約半額ほどの価格設定。
▼入手したOmniGo 100のパッケージ。19年前のものとは思えない、非常にいい状態のものが入手できた。
▼ご開帳。本体、バッテリ類とマニュアルやオプションのカタログ類のみ。非常にシンプル。
▼OmniGo 100本体。あまり高級感はないが、安っぽくもない仕上がり。
▼手に持った感じ。重さも329gと、640gもある初代Newtonと比べると携帯性は悪くない。
▼裏面上部のカバーを外すと、単三電池が二本入るようになっている。
Newtonもそうだが、この時代のPDA・ハンドヘルド、乾電池で駆動していたというのが凄い。しかも、OmniGoに搭載しているCPUは80186互換のNEC V20という低消費電力CPUをコアにしたVadem社のワンチップPC。
▼左側面には拡張用のPCMCIA Type IIスロット。ただし、当時HPが動作を保証していたのはSRAMカードのみ。
▼右側面には母艦接続用のシリアルコネクタがむき出しで設定。上のスリットはバックアップ電池のCR2032を格納する部分。
▼前部。左隅のボタンは開閉用、右端のレバーはPCMCIAカード排出用。
▼後部から。一周見渡して気がつくが、OmniGoにはなんと外部電源コネクタがない。どういう設計思想だったんだろうか。単に忘れたのか。
▼OmniGo 100、液晶部分を開き起動したところ。ハンドヘルドとしては他で見られない、6×6センチと正方形の液晶画面を持つ。スタイラスは写真の場所から取り出して使う事ができる。
▼OmniGo 100のデザインの特筆すべき点の一つ。液晶部分が180度回転し、タブレットのようにも利用できる。今から19年も前にこの設計思想を持ったデザイナーに拍手。
画面の縦横切替えは上記写真の左下のアイコンをタッチして行う。この時代まだ加速度センサーの搭載は一般的ではなかった※。
※iPhoneやAndroid端末では、端末の縦・横位置の自動検出を、内蔵の加速度センサーで行っている。
OmniGo 100のタッチパネルは感圧式。液晶は正方形6×6センチで、本体サイズと比べるとかなり小さい。ハンドヘルドは、スマホのように顔の側に持って来て使う端末ではないので、この画面サイズと文字はあまりに小さすぎる。画面サイズの極端な小ささが、OmniGo 100の欠点の一つと感じる。しかも、さらに輪に掛けて液晶の視認性がよろしくない。今回写真を撮るのにもかなり苦労した。
▼OmniGo 100の1年後に発売され、爆発的な人気となった、Palm Pilotと並べてみると、筐体の大きさがかなり違うのに対し、表示部分の大きさは殆ど一緒。
実は、Palm PilotとOmniGoには意外な共通点がある。OmniGo 100発売の1年後にPalm Pilotが発売された。このPalm Pilotに搭載された、Palm社開発の手書き入力方式はGrafittiと呼ばれている。実は、OmniGoにもこのPalm社のGraffitiによる手書き入力システムが搭載されている。
OmniGo発売時ごろまで、Palm社はソフトウェアライセンスに特化した企業であったため、Graffitiはそのビジネスの一環としてOmniGoにライセンス、搭載された。一年後強力な競合企業になることは、この時点で誰も知ることもなし。
▼OmniGo 100のGraffiti入力画面。Palmを愛用されていた方ならよくご存じの入力方式。
OmniGo 100に搭載されているOSは、GeoWorks社のPEN/GEOS。PEN/GEOSはDOSのファイルシステムの上に独自GUIによるユーザインタフェース、アプリケーションスイートなどを組み合わせた、ハンドヘルド・ローエンドPC端末向けのGUI OS。
▼PEN/GEOSベースのOmniGo 100のメニュー画面。ご覧の通り、様々なアプリが標準搭載されている。
▼YouTubeにOmniGo 120 (後継モデル)のデモ映像があったのでご参考まで。
PEN/GEOSはOmniGo以外にも、Nokia Communicatorの初期シリーズなどに搭載されていた。
▼OmniGo 100と同様にPEN/GEOSを搭載した、Nokia初のスマートフォン、Communicator 9000ilの画面。なんとなく雰囲気は似ているような。
▼1年先輩のNewtonと大きさを比較してみる。Newtonマジでかい。
▼ついでにiPhone 5との比較。もはや隔世の感としか。
試しにスペックも比較してみた。技術の進歩ってすんごい。
OmniGo 100 | iPhone 5 | 差 | |
クロックスピード | 14MHz | 1.3GHz | 92倍 |
メモリ | 1MBytes | 1GBytes | 1000倍 |
画素数 | 240×240 | 1136×640 | 12倍 |
重量 | 329g | 112g | 0.34倍 |
OmniGoもNewtonと同様、PDAの黎明期に登場した端末だが、どちらも商業的には成功と言えない結果となった。OmniGoに搭載されたGrafittiを開発したPalm Computingは、ハードウェア企業に転身、一年後に発売されたPilotを皮切りにPDA、スマートフォンで劇的な成功を果たすことになった。 後年、HPはCompaqの買収とともに手に入れた、Pocket PCのiPAQを利用し、Palm社とPDA・スマートフォンで激しい競争をすることになり、さらに後日、HP社はPalm社自体をも買収することになる。
というわけで、第二回おしまい。『骨董移動端末館』次回をお楽しみにー。
メーカー | Hewlett Packard Inc. |
製品名 | HP OmniGo 100 Organizer Plus |
型番 | F1310A (1MB RAM) |
発売年月 | 1994年2月 |
発売時価格/入手価格 | $349/ $36 @ eBay |
CPU | Vadem VG230 – NEC V30HL 16MHz (80186互換) 内蔵 |
OS | Geoworks PEN/GEOS |
ディスプレイ | 6x6cm (対角3.7インチ) 反射式LCD、2値モノクロ240×240ドット |
入力方式 | 感圧式タッチパネル、キーボード、手書き入力 (Palm Graffiti) |
電源 | 単3乾電池 x 2、SRAMバックアップ用 SR2322 x 1 |
寸法・重量 | 15.3 x 9.5 x 2.6 cm・329g (バッテリ込) |
詳細情報 | ericlindsay.com – Hewlett Packard OmniGo 100 pdadb.net – Hewlett Packard OmniGo 100 |