前回レビューしたXiaomiグループのHuami社のスマートウォッチ、Amazfit BIP。
色々調べていたら気が付いたのですが、同様に反射型メモリ液晶を搭載したAmazfit PaceというモデルがAmazfit BIPよりも前に発売されていました。
Amazfit PaceはAndroidベースのカスタムOSを搭載していて、Amazfit BIPに比べて弄り甲斐がありそうです。
それにしてもHuami Amazfitシリーズ、こんな強力な布陣なのに、どうして最近まで知らなかったんだろう。私のTwitter TLにもついぞ登場したことなかったし。
今回はAmazfit Paceのレビューとともに、カスタマイズ関係の情報も併せてまとめていきます。
Amazfit Pace | 開封の儀
Amazfit Pace、Amazonだと14,000円ぐらいで販売されていました。(2018年当時)
[2021年9月追記] 現在は新型のAmazfit GTRが13000円近辺で販売されています。
▼Amazfit Pace外箱
▼シールをはがすと『VOID(無効)』の表示が。
時計にしては、やけに警戒が厳重ですね。一体何を恐れているのでしょうか。
▼開けると、Amazfit Pace本体の下には付属品が収納されています。
Amazfit BIP同様、紙製の内装はシンプルかつ綺麗にデザインされています。
▼本体と付属品全部。
本体と、クレードルとUSBケーブル、説明書は英文のみです。クレードルは充電だけでなく、PCとの接続、データ転送用に使用できます。
▼Amazfit Paceの裏側。
中心部に脈拍センサーと充電・転送用のコネクタがあります。唯一の物理スイッチが側面にありますが、裏側寄りにセットされており、若干押しにくいです。
Amazfit Paceのベルトは22mmになっており、Pebble Timeと同じサイズです。Amazfit BIPのベルトサイズは20mmでした。
▼電源オン、初期設定中に渦巻きのアニメーションが再生されます。
▼終わると、画面にはQRコード
QRコードの下に、“Amazfit Watch”アプリからこのQRコードをスキャンせよ、とあります。Amazfit WatchアプリはApp Store、Google Playからダウンロードできます。Amazfit Watchアプリは英語表示のみ対応になっています。
Amazfit BIPのアプリのMii Fitの方は完全に日本語化されていたのですが、なんででしょうね。ていうか、同じアプリに統一してくれればいいとも思うのですが。時計側のOSが違うのでむずかしいのでしょうか。
▼アプリからアカウント設定などを行うと、QRコード読み込み画面になります。
Amazfit WatchアプリからQRコードを読み込むと、スマホとペアリングがされます。Pebbleでもそうでしたが、スマートウォッチのBluetoothペアリング設定って、たいがいトラブることが多いので、この方式はらくちんでいいですね。
▼文字盤はBipやPebbleと同様、常時点灯です。
常時盤面が表示される便利さを味わってしまうと、なかなか他のスマートウォッチに移る気になれませんねえ。反射型メモリ液晶搭載モデル、もっとたくさん出てほしいものです。
Amazfit Pace、時計側のシステム表示はすべて英語ですが、日本語の通知等はきちんと表示できます。
▼母艦側のメール通知を受信。日本語フォントもキレイ。
Amazfit Pace | 機能と仕様
前回と同様に、Amazfit PaceとPebble Timeの仕様を比較しつつ、機能を紹介していきたいと思います。赤字がそれぞれ負けている部分です。※写真ではPebble Time Steelを使用しています。
Amazfit Pace vs. Pebble Time 仕様比較
製品名 | Amazfit Pace | Pebble Time |
---|---|---|
ディスプレイ | 1.34インチ 320x300 (327PPI) 262,144色 | 1.25インチ 144x168 (182PPI) 64色 |
タッチスクリーン | 〇 | × |
物理ボタン | 1 | 4 |
CPU | Ingenic M200S 1.2GHz | STMicro Cortex M4 100MHz |
メモリ | 512MB RAM 4GB SSD (USER領域2GB) | 16MB |
Bluetooth | 4.0LE A2DP対応 | 4.0 LE |
WiFi | 802.11b/g/n | x |
3軸加速度センサー | 〇 | 〇 |
地磁気センサー | 〇 | 〇 |
気圧計 | 〇 | × |
PPG心拍センサー | 〇 | × |
GPS | A-GPS GLONASS | × |
OS | AOSS 5.1ベース | Free RTOSベース |
バッテリー | 280mAh Li-Po | 150mAh Li-Po |
連続使用時間 | 通常の使用で5日 時計のみの使用で11.6日 GPS使用時35時間 | 通常の使用で7日 |
防水 | IP67 | 30M防水 |
寸法・重量 | 45.72x45.72x12.7mm 54g | 47x37.5x9.5mm 42.5g |
文字盤 | 21種類 | 数百の文字盤が ダウンロード可能 |
アプリ | 内蔵アプリのみ 活動量計、天気、心拍数計 MP3プレイヤー、アラーム コンパス、ストップウォッチ 睡眠計、タイマー | 多数のアプリが ダウンロード可能 |
発売日 | 2016/8/1 | 2015/5/1 |
価格 | $139.99 | $149 |
ディスプレイは反射型メモリ液晶を搭載しています。メモリ液晶は、画素の1つ1つにメモリが割り当てられており、システム側を止めても、ごく微弱な電力供給だけで画面を表示し続けることができます。また、反射式で外光だけで表示ができるため、全体の消費電力を非常に低く抑えられます。このため、常時盤面を表示しても長時間使用することができるのです。さらに、Amazfit Paceは、320×300、327PPIと高精細かつ262,144色の自然色表示が可能になっています。
▼Amazfit Paceに表示された文字盤。
▼64色182PPIのPebbleと比べると表示が非常に美しいです。(タップで拡大)
しかし、これには若干オチがあります。常時表示モードでは、262,144色表示をすることができません。
▼フル稼働時と常時表示モード(サスペンド状態)の画面比較 (タップで拡大)
腕を上げてフロントライトをつけたり、竜頭を押して盤面をアクティブにして数秒の間は、秒表示や秒針表示がされます。(フロントライトオン→フロントライトオフの数秒間) この間だけは中間色が綺麗に表示されています。フロントライトがオフになって数秒後、写真右の常時表示モードに移行すると、秒表示が消えると同時に画面がフっと変わります。写真を拡大してみていただくとわかるように、中間色表現されていた部分は、誤差拡散法で減色した表示に変わっています。使っていればさほど気にはなりませんが、これは使用されているメモリ液晶の仕様なんでしょうかね。
Amazfit PaceのCPUはIngenicという中国のファブレスCPUメーカーのものですが、MIPSベースの1.2GHzと、Android Wearを動作させることができる強力なものです。実際の利用にあたってもAmazfit PaceUIは非常にスムーズに動作します。
Amazfit PaceにはSSDのユーザー領域も2GBあり、MP3ファイルや画像などを格納、利用することが可能です。Amazfit PaceのBluetoothはA2DPプロファイルに対応しており、ステレオヘッドフォンをペアリングすれば、スマホなしで音楽を再生することができます。ジョギングなどでの利用に便利そうですね。音楽の転送はクレードル経由でPCからMusicフォルダにMP3ファイルをコピーします。
▼内蔵の音楽プレーヤの画面
ただし、このプレーヤーには曲の送り・戻ししかコントロールがなく、曲を選んで再生したりすることはできません。日本語の曲名表示はできますが、表示が自動スクロールしてくれるわけでもないので、頭の部分しか表示されません。
Amazfit PaceにはWiFiも搭載されています。最近のAndroid Wearウォッチ事情をよく理解していないのですが、WiFiはどのような利用を想定されているのでしょうかね。Amazfit Paceの初期設定中に、WiFi接続の設定をさせられ、ファームウェアのダウンロードなどをWiFi経由でやっていたようです。
センサー類も充実しており、Pebble Timeにはなかった心拍センサー、気圧計やGPSも搭載しています。GPSを内蔵したことにより、スマホなしでAmazfit Paceをつけているだけで、ジョギングなどの際の位置情報の記録を行うことができます。
Amazfit Paceは280mAhと大容量のバッテリを搭載しており、通知などを表示した通常の利用方法では5日程度使用することができるようです。時計機能のみの表示だと11日間使用できるそうです。AndroidベースのカスタムOSを動作させながらこの電池の持ちは素晴らしいと思います。一般的なAndroidスマートウォッチでは1-2日程度しか持ちませんから、反射型メモリ液晶の貢献がかなり大きいのだと思います。
防水機能に関しては、Amazfit PaceはIP67対応となっています。IPX7は水深1Mで30分は浸水しない仕様です。雨や水仕事では問題ないですが、水泳などでは安心して利用できないですね。Pebbleは30M防水、低価格機のAmazfit BIPもIP68ですから、ここはちょっと残念です。
[2021年9月追記] 最新のAmazfit GTRでは50M防水(5 ATM)になっています。
Amazfit Paceの文字盤は全部で21種類組み込まれており、Amazfit Pace本体の設定か、Amazfitアプリから変更することができます。
▼Amazfit Paceの文字盤
公式には文字盤ダウンロードサービスなどは用意されていないようです。非公式の話はまた後ほど。
Amazfitシリーズは活動量計の機能を主体としたスマートウォッチです。Amazfit Paceには内蔵したセンサーを活用する活動量計(Activity)を始めとする、アプリ各種が搭載されています。活動量計に関してはRun、Walk、Run Indoor、Bike、Bike Indoorなど全部で9種目をカバーしています。
Amazfit Pace | 非公式カスタマイズ
公式にはサードパーティ文字盤やアプリの追加もできないAmazfit Paceですが、もちろん世界中のガジェッターズがこの状態を放っておくわけはありませんね。様々な勝手開発とハッキング作業が進められています。以下紹介していきますが、Huami社の保証する利用方法ではありませんので、ご利用は自己責任でどうぞ。
[ツール類]
AMAZFIT Pace Tool
Windows母艦用のツールです。様々な作業に使える便利なツールなので、最初に入手しておきましょう。Amazfit PaceへのAPKのインストールや、スクリーンショットを取ったり、リブート、ブートローダー関連の作業を行ったりできます。
PaceOn v5.4
PaceOnはAmazfit Pace側にインストールする、電源関係の設定を変更するツールです。Amazfit Pace ToolのAPK Installerからインストールできます。PaceOnでは、画面のサスペンドまでの時間を変更したり、Bluetooth/WiFiのオンオフなどが設定できます。画面のサスペンドをしない設定にして綺麗なフルカラー文字盤でずっと使い続けると1日ぐらいで電池切れちゃいそうですw
Watch Droid Assistant 6.0
Watch Droid Assistantは母艦のAndroidスマホ側と、Amazfit Pace側の2つのapk構成になっています。双方を接続すると、Amazfitからスマホ側の機能のコントロールができるようになります。
Simple Amazfit Watchface Builder
Amazfit Pace用の文字盤作成ツール(webサービス)です。
[カスタム文字盤]
Simple Amazfit Watchface Builder
Watchface Builderのトップページから、15000以上ものカスタム文字盤がダウンロードできます。利用方法は、ダウンロードしたカスタム文字盤(.wfz)を、PCに接続したAmazfit PaceのWatchFaceフォルダに放り込みます。あとはPaceの設定からその文字盤を選ぶだけです。
Amazfitwatchfaces.com
こちらにも多数文字盤がアップロードされています。利用方法は一緒です。Amazfit BIP用の文字盤もあります。
[勝手アプリ]
Amazfit PACE/Smartwatch compatible application list
Amazfit PaceにはAndroidベースのカスタムOSが使われています。ということは、Google Wear(Android Wear)用のapkをどうにかすれば実行できる可能性があります。この記事にリンクされているGoogle Spreadsheetには、Amazfit Paceで動作の可否をテストした多数のAndroid Wearアプリがリストアップされています。大きな声では言えませんが、apkのリンk
Full Android Watch
(Round Android Smartwachesフォーラム: 閲覧にはフォーラムユーザ登録必要)
通常スマートウォッチ側の Google Wear apkは、母艦側アプリの.apk\res\rawに格納されています。これをapkエディタでsdkバージョンを7に変更すると、Google Wear以外のAndroidデバイスで動作するようになるらしく、結果としてAmazfit Paceでも動作可能になるものがあるようです。
Free Apps for Amazfit Pace
ソリテア、タスクマネージャ、システム情報、サウンドレコーダーなど、Paceで動作するようにパッチをあてたapk
[APP] Widget Calendar v1.6.1
Amazfit Pace用に開発されたカレンダーウィジェット。
Amazfit Gallery App
Amazfit Pace用に開発されたフォトギャラリーアプリ
[Amazfit Paceカスタマイズ情報ページ]
[DEV][PACE/STRATOS] Android Wear Framework
HOW TO INSTALL ANDROID APK APPS TO AMAZFIT PACE THE EASY WAY
Amazfit Pace | まとめ
Amazfit Pace、スマートウォッチ・活動量計としての機能をフル搭載した上、常時表示の高精細ディスプレイ、約5日のバッテリーライフなど、かなりイケてます。5日間のバッテリーライフはPebblerとしては少しだけ物足りないですが、Pebble Timeの後継として十分検討できるのでは?
さらに、Amazfit Pace、弄り甲斐満点なスマートウォッチです。文字盤の作成や、Androidアプリのsideloadなど、できることはPebbleよりもっとたくさん。カスタマイズ好きな方、ご自分でアプリ開発される方にもかなりお勧めです。
[2021年9月追記] 2021年現在、Amazfit Paceは販売が終了されており、後継機と思われる新型のGTRがAmazonでは13000円近辺で販売されています。
Amazfit Pace検証会場[ロケ地:台湾]からは以上です。
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