以前から、効果的なプレゼンテーションについて、まとめてみたいと思っていた。
最近、プレゼンテーションについて書かれている記事も増えてきたし、この機会に自分でも書き始めてみる。
今回は、効果的なプレゼンテーション・スライドを作成するための、キーポイントについてまとめた。
◆プレゼンテーションとは
大勢の人に対するスピーチ、社内・顧客への提案、調査データのまとめ発表…など色々な状況があるとおもう。
必ずしも、PowerPointなどのスライド資料や、分厚い資料を配布して読み上げるだけがプレゼンテーションではない。
資料を見せることなく、電話でセールスするのもプレゼンテーションだし、口頭だけでする自己紹介だってプレゼンテーションだ。
逆に、メールで資料だけ送りつけて、相手に読んでもらうことだってプレゼンテーションだ。
辞書によれば、
n. 贈呈; 贈り物; 紹介; 拝謁; 提出; 呈示; 表現; 上演; 演出; (牧師の)推薦; 【医】胎位; 【金融】手形の呈示;
【商業】プレゼンテーション, 発表, 公開.相手を説得する、何かを紹介して覚えてもらう(出典: goo 辞書)
とある。
「プレゼン」というカタカナ英語があるが、適切な日本語が見当たらない。私の解釈としては、この辞書にあるように、「相手を説得する」、「何かを紹介して覚えてもらう」一連の作業、がプレゼンテーションに最も近いと思う。
◆思考支援にプレゼンテーションツールを活用
WindowsならPowerpoint、MacならKeynoteなど。プレゼンテーション作成にはこういったツールを利用することが多いと思う。
ご存知の通り、これらのツールは、文字や図版をスライドにレイアウトをし、スクリーンに順番に表示する機能を持つ。この部分だけに注目しがちだが、もう一つ、大きな役割を持っている。
最終的なプレゼンテーションに向けて、伝えたい内容に推敲を重ねていく、思考支援ツールとしての役割だ。慎重に推敲を加えながら、並行して資料の内容が向上していき、最終的に優れた構成のプレゼンテーション・スライドが完成するのだ。この部分の理解なくして、単に話したい内容をずらずらと並べただけのプレゼンテーション・スライドに説得力はない。
推敲を重ねたプレゼンテーション・スライドは、話し手のスピーチを視覚で補完し、聞き手に伝えたいポイントを確実に伝えることができるはずだ。
※私が毎年PowerPointで年賀状を作っているのは内緒だw
◆要所ごとに、訴求ポイントは1つに絞り込め
1時間のプレゼンテーションを聞いて、聴衆が印象強く覚えていられることは、4つぐらいがせいぜいである。だから、プレゼンテーション全体の目的を明確にし、要所ごとに最低限1つだけ心に残して欲しいポイントを決めなくてはならない。
同様に、スライド は一枚ごとに、ブレットは1つごとに、確実に1つの訴求ポイントを決める。
▼用途によって微妙に異なると思うが、基本的なスライドの構成例。
タイトルに話す内容を持ってくれば、話をふくらませても、聞き手は今何を話しているかを見失わないですむ。
スライドの最後に、伝えたいキーメッセージを持ってくれば、たとえ話が脱線したり、自分が話していることがよくわからなくなっても、最後に重要なポイントに戻ることもできる。この図にはないが、ブレットは段付できるので、重要なポイントを上位のブレットに繰り上げたり、不要なものを下げたりして、推敲を重ねて行く。
目的と伝えたいポイントを、要所ごとに絞り込んでいけば、プレゼンテーション全体で、自ずと訴求ポイントが集約されていくはずだ。
プレゼンテーションによっては、デモや、ビデオを見せる場合もあると思う。これらについても、それぞれで訴求ポイントを考え、終わった後に口頭でまとめておくと、聞き手の印象に残りやすいはずだ。
◆推敲してスライドの文字を減らせば、ストーリーが頭に入る
文字数の多いプレゼンテーションや、それを読み上げるようなプレゼンテーションはヤメロ、とよく言われる。非常に正しい。文字が多ければ、聞き手は画面の文字を読み始めてしまい、あなたの話から注意がそれてしまう。あるいは、配布資料の文字を、始まる前に全部読み終わってしまい、プレゼンテーションと関係のないことを考え始めてしまうかもしれない。
だからと言って、単純に文字数を少なくするだけなら、情報量の少ない、意味をなさないスライドができるだけだ。
推敲を重ねるほどに、プレゼンテーション内容は自然と、訴求ポイントだけをまとめた簡潔なものになる。
推敲、編集して、ポイントを絞って行くにつれ、文字や説明はスライドから、自分の頭の中にストーリーが移動していくのだ。
いかに簡潔にポイントをまとめるか、考えぬいた末に、文が抽象化されたビジュアル化することも多い。こういった図版には、文字が少ないが、きっと何分でも話続けられるほど、あるいは聞き手が見るだけで色々な情報がつたわるほど、ストーリーが凝縮されているはずだ。
推敲を重ねた優れたプレゼンテーションが完成したとき、その資料なしでも、人々を説得・取り込んでしまうスピーチができてしまう筈だ。
◆思いつきで絵や図を使わない。絶対にだ。
スライドを作成するとき、見た目を美しくしたいと思って、安易にクリップアートや写真を使用してはならない。
文字と言葉が中心のプレゼンテーションで、ビジュアル要素は、決定的に聴衆の興味を引き付ける。
伝えたい内容があやふやな状況で、写真でも貼りつけてしまったら、聞き手はそこだけを見てしまい、本当に伝えるべきことから注意がそれてしまう。
逆に、ビジュアルによって、聞き手の興味を一手にそこに引き付けることができる。写真、図版、アニメーション、ビデオなど。これらは伝えたいメッセージと関連付けることによって、目と耳の双方から、強烈に聞き手の頭に残るはずだ。
スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは、その代表的な例だ。彼の素晴らしいスピーチが行われている間、バックに映し出されるスライドには、ほんの少しの文字と、画像しかない、スカスカのスライドだ。しかし、ジョブズのスライドを順番にぱらぱらと見てみればわかるが、必要不可欠な情報は、彼のスピーチを聞かずまでも、網羅されている。
おそらく、ジョブズは慎重に訴求するシナリを作り、絞り込んだ訴求ポイントだけを、対応したビジュアルと最小限のテキストで配置しているはずだ。 シナリオの残りは頭の中であの素晴らしいスピーチになるんだろう。
自分で推敲を重ねた、スライドのキーメッセージが決まった時、初めてビジュアルを活用することを考えれば、訴求効果は最大になるはずだ。
◆優れたスライドと、説得力あるスピーチが同時に完成
優れたスライドは、簡潔なものになると言った。一方、文字数が減っただけのスライドは意味がないとも説明した。試しに、完成したスライドを、説明なしでだれかにパラパラと斜め読みさせて、反応を見てみるとよい。『もっと詳しく聞きたい』とか、『その通りだと思う』みたいな感想が出れば大成功。『で?何が言いたいの』と聞かれればその資料は訴求ポイントをまとめきれていないということだ。
一方、推敲を重ねたスライドを作った本人の頭には、説得力あるシナリオが構築されているはずだ。
スライドがなくても、すらすらと聞き手を説得するスピーチがきっと出来るはずだ。
つまり、優れたスライドと、資料作成者のスピーチは、どちらだけでも用を成すということだ。
最後に、スライドとスピーチは、プレゼンテーションの環境によって、柔軟に変えて行く必要がある。聞き手の人数や、一方向のスピーチなのか、社内での相互議論の材料なのか、顧客相手なのか、状況にあわせてスライドや、スピーチを微調整すれば、より一層聞き手の注意を喚起し、伝えたいメッセージを確実にすることができる。状況が変わっても、全体のシナリオは大きくは変わらないはずだ。
◆まとめ
- プレゼンテーションツールは、思考ツールだ
- 要所ごとに、訴求ポイントを1つに絞り込め
- 推敲により、自然とスライドの文字数は減る
- 思いつきでビジュアルを使わない
- 要点を押さえた簡潔なスライドと、説得力あるスピーチが同時に完成
最後に
実はこのエントリは、私から皆さんへのプレゼンテーション・スピーチになるよう、意識して書いた。
私の今回のプレゼンテーションの目的は『こいつ、プレゼンテーションに関して詳しそうだ、もっと話が聞きたい』と思わせること。
この目的を達成するために、流れやポイントを充分に推敲した。うまくできたかな?
正直思ったより大変だった。ついでに、オチもつけておく。
今回のエントリを、スライド形式でまとめた。
ダウンロードはこちら。
(必要に応じて更新予定なので、スライドへの直リンクは禁止で。)
スライドのタイトルは、本文と若干変えてあるが、このエントリは、スライドのスピーカーノートになっている。
スライドと、このエントリを併せて見てもらって、効果的なプレゼンテーションができていると思ってもらえれば、私の目的は達成できたことになるかなと思う。
皆様の感想をコメント、tweet、はてブ等々でお待ちしております。たくさん頂けたら、続きも書きますw